原油価格上昇の背景

なぜ今原油価格は上昇しているのか

日本の大震災は、世界の原油市場をも揺るがした。

 

3月15日、米国市場の原油先物価格(WTI)は101ドルから97ドル(1バレル当たり。以下同)へ、欧州市場の先物価格(ブレント)は114ドルから109ドルへと急落。世界3位の原油輸入国である日本の需要が、震災と原発事故の影響で大幅に落ち込むとの観測からだ。

 

原油イメージ

 

だがWTIもブレントも、17日には急落前の水準に戻った。「過剰な反応を起こした市場が、冷静さを取り戻しつつある」。原油価格は、2月下旬から高騰していた。産油国であるリビアの、政変の影響だ。「最近の原油市場は、日本の震災と中東・北アフリカ情勢を天秤にかけている状態だが、後者の影響のほうが大きい」といラ構図になった。

 

3月11日には、激化するバーレーンのデモにサウジアラビアなどが軍隊を派遣。さらに19日には米英仏などの多国籍軍がリビアに空爆を開始し、原油の供給不安'がいっそう高まった。

 

リビアの産油量は160万〜170万バレル/日だが、現在はこれが30万〜40万バレル/日に落ち込み、輸出はほぼ止まっている状態といわれる。リビアの輸出先は主に欧州のため、直接的に影響するのはブレントだが、WTIや、日本の原油輸入価格の基準となるドバイ原油価格(スポット)も、これに引きずられて上昇。ドバイ原油は現在ほぽブレントと連動して110ドル前後で推移している。またバーレーンは産油国ではないが、政変が世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアに飛び火することが、懸念されている。

年内は原油価格高止まり中東慎勢次第では暴騰も

原油価格が高騰すれば、傷んだ日本経済に大きな打撃を与える。WTIで120ドルがその分水嶺というのが、一般的な見方だ。じつは、世界の原油の需給は、逼迫しているわけではない。

 

リビアの輸出停止分は、OPECの余剰生産能力400万バレル/日で埋められる。米国に至っては、原油の在庫がかなり高い水準にある。日本の復興需要と原発停止の代替需要が、世界の原油需要を押し上げるという観測もあるが、これも「`辰災による需要鈍化と打ち消し合う」ため、市場に影響を与えるほどではない。要は、現在の原油価格は実需から見て。高過ぎ々なのだ。

 

それにもかかわらず原油価格が高止まりしているのは、投機のためだ。投機資金は、景気への悪影響による需要減退などの可能性は見ず、中東・北アフリカの供給不安のみを材料視している。

 

一方で、投機資金が引いて、原油が値下がりするというシナリオも、当面は実現しそうにない。「をともと、これから夏場の需要期にかけては価格が上がりやすい時期。世界の需給は余裕がなくなりつつあり、また世界的な金融緩和によるカネ余りの状態が根強いため、相場は下がりにくい」。

 

東・北アフリカの情勢が落ち着くには少なくとも数力月はかかりそうだ。結果として年末までは、WTIで100ドルを中心に上下10ドル、ブレントはこれに+10ドルでの相場が続くというのが、多くの専門家の見方だ。

 

120ドルを超えることがあるとすれば、政変がさらにリビア以外の産油国にまで波及したときである。『そうなった場合は、景気を無視して上昇していく』。最も懸念されるのが、先述のとおりサウジアラビアへの飛び火だ。同国は、OPEC余剰生産能力の7割、世界の総生産量のI割を占める。今のところ可能性は高くないが、万が一サウジアラビアの輸出が止まると、「天井が見えない。200ドルも十分ありうる」という事態になる。

 

脱原発々ブームで天然ガス価格が上昇

震災は、むしろ原油以外のエネルギー市場への影響が大きい。先に結論をいえば、石炭、天然ガスの価格を上昇させるだろう。

 

日本では、総発電量の5%に当たる原発が停止に陥っている。このぶんを火力発電で代替すると、燃料となる石油(重油・軽油)、石炭、天然ガスの需要が増える。代替としては、当面はLNG(液化天然ガス)、中長期では石炭という見方が多い。LNGによる発電は火力の調節がしやすく、高度な設備もいらないためだ。価格も原油よ昨八安い。石炭はさらに安価だが、二酸化炭素排出量が大きく、低減するには上乗せのコストがかかる。環境対応とどう折り合いをつけるかが議論となろう。

 

日本のLNG需要がどれくらい増えるかについては、見方が分かれる。試算数値は上下にかなりの幅がある。ただ、いずれにしても世界の需給にインパクトを与えるほどではなさそうだ。幸いなことに、現在の天然ガスの需給は緩み気味だ。。天然ガス大国々のカタールがちょうど輸出を大幅に増やしていたこと、北米で岩石から抽出する新たな天然ガス資源「シェールガス」が、大々的に生産され始めたことが効いた。

 

もっとも、今後は価格上昇に向かうこと必至だ。問題は、この。火力シフトの動きが日本にとどまらないことである。周知のとおり、福島第1原発の事故を受けて、世界中で原発政策の見直しが進んでいるからだ。

 

天然ガスの市場は米国、欧州、アジアに分断されており、それぞれ価格体系も違う。欧州、アジアについては、基本的に原油価格に連動する仕組みだ。実際にどう連動するかは売り手と買い手の力関係次第で、今後は売り手側か優位になるだろう。なお米国の天然ガスはかなり余っているが、他地域に持っていくのは簡単ではない。

 

すでに欧州(英国市場)のスポット価格で10ドル(100万BTU)当たり。以下同)前後まで上昇しており、「欧州とアジアで引っ張り合いとなる結果、2〜3ドルの上乗せとな
る。また天然ガスは原油より値動きが激しく、15ドル程度への上昇も十分ありうる。

 

簡単に試算すると、仮に電力不足分をすべてLNGで代替した場合、直近の価格水準で4000億〜5000億円の輸入額増、価格が1.5倍なら6000億〜7500億円の輸入額増となる。原油価格の高騰に比べればインパクトは小さいが、電気料金などへの影響もありそうだ。

 

参考/ひまわりさんのFXブログ達人さんのFXサイト